事前準備なし!その場で分担して読んでまとめて対話する、全員参加コラボレーション型の読書法
アクティブ・ブック・ダイアローグ®(Active Book Dialogue)は、1冊の本を参加者で分担して読み、それぞれが自分のパートを紙にまとめてプレゼンすることで本の内容をインプットし、後半の対話で参加者同士の考えを紡ぎ合わせて新しい気付きを得る、全員参加型、コラボレーション型の読書法です。頭文字をとって、ABDと略されています。
読書会というと、参加者が事前に購入して読み込んでいかなければなりませんが、リアルでのABDは本の購入が不要です。てぶらでOKです。当日いきなりの参加でも全く問題がありません。
なお、最近はオンラインがメインストリームになりつつある気がしています。オンライン(onABD)の場合は、全員が事前に本を購入しておく必要があります。参加者は1冊の本を共有することができませんので、
やり方はとても簡単ですが、ABDを通して得られるものを最大化するためのtipsも最後に提案したいと思います。
必要なものは、紙とペンとテープ、そして本
1回の開催につき、対象となる本を1冊用意しましょう。参加者全員がそれぞれ買う必要はありません!
備品は、紙とペン、それに紙をつなぐテープがあればよいです。セロハンテープよりも剥がしやすいマスキングテープのほうがよいでしょう。用意するペンはプロッキーのような太めのもののほうが、後でプレゼンテーションするときに他の参加者が見やすくなります。ほかにあったら便利なものとしては、付箋やカラーシールがあります。
付箋やカラーシールは、ギャラリーウォークをするときに使用します。
ABDの進め方
大きく以下の3つのプロセスに分かれます。
- (ファシリテーターの事前準備)
- オープニング
- メイン
- エンディング
それぞれの内容を説明していきます。
①ファシリテーターの事前準備
●ゴールを明確に
ABDの成否は、ファシリテーターの準備によって、大きく左右されるといっても過言ではありません。参加者に事前準備の必要はありませんが、主催者もしくはファシリテーターはしっかり準備しておきましょう(^^;
何をもって成功とするかはそれぞれかと思いますが、開催した目的が必ずあるはずですから、そのゴールを達成できるかどうか、ファシリテーターは責任をもって準備をしておく必要があります。一番大事なのは目的です。ABDが終わった後、参加者はどんな状態になっていればいいのか、しっかりイメージして組み立てます。
目的は難しく考えなくても、「チームのみんなが仲良くなる!」でもいいですし、「楽しそうだからとにかくやってみる!」というものでもいいと思います。こうなると、本は何か決まったものでなくても良さそうですね。
●仕込み
目的が明確になったら、仕込みです。
目的達成のためのコンテンツ内容はもちろん、イベント開催までにどのくらいの人数が参加しそうか、どうやって集客しようか、当日までにどう気持ちの準備をさせるかもテクニックです。
例えば参加者3人で600ページの本を読むとなると、単純計算で一人当たり200ページもあります(^^; このギャップを、コンテンツや集客で補うという考え方もありますし、イベントそのものの時間を変更する手もあります。
得られるものを最大化するために、ABDだけやらず別のアクティビティやワークショップと組み合わせることだって考えられますね。
●必要なモノ
- 本
- プロッキー(濃い色)
- 紙(A4またはB5)を参加者数×6枚程度
- マスキングテープ
- ストップウォッチアプリ
- (任意)ポストイット
- (任意)シール
ペンは、プロッキーがおすすめです。
サインペンでは細すぎ、マッキーだと油性なので裏うつりの可能性があり、テーブルを汚してしまう恐れがあります。また、プロッキーはペン先の角度によって、たくさんの書きようができますので、表現が多様になります。
>アクティブ・ブック・ダイアローグ®で使える8つの道具を紹介
②オープニング
●チェックイン
チェックインはABDに限らず、ワークショップなどでも取り入れられます。簡単に言えば、参加者の気持ちを切り替えるプロセスです。参加者自身が今日来た目的や期待を語ったり、他の参加者の気持ちを聞くことによって多面的にテーマについて考えるきっかけになります。
●オリエンテーション
その回のABDの進め方を説明しましょう。
ABDは「ダイアローグ」というくらい参加者同士の対話を大切にします。ですので、もしABDに参加するのが初めての方が多かったりすれば、具体的な進め方のほかに、試しに「参加する」という行為をこのオリエンテーションで試してもらうのもよいでしょう。よくやられる手法としては、自己紹介を本番と同じ紙にペンを使って書いてもらい、一人ずつ発表していく、とかです。
また、グループに分けて5分くらいで試しにコサマライズしてもらうというやり方もあります。
③メイン
●本を破る
その場で破ってもいいですし、事前に破ってきてもよいです。本の厚みや製本の種類によって破る難易度が違うので、できれば事前に裁断しておくほうがいいです。
なお、章ごと分担を持つと読みやすくなるのですが、章の途中で分かれても問題はないと思います。
●コサマライズ
このプロセスのなかに、「読む」と「まとめる」があります。
参加者それぞれが担当となったパートを読んでみて、決められた枚数の紙にまとめます。目安としては6枚以内がよいです。あまり枚数が多いと要点を抽出しにくくなりますし、せいぜい6枚が壁に縦一列に貼れる限度枚数だと思います。
注意点として、まとめるのはあなたの解釈ではなく本の「要約」です。その本を知らない人がプレゼンを聴いても著者の伝えたいことが伝わることが望ましいです。
●壁に貼る
まとめ終わったら壁に貼りましょう。
それぞれがまとめたパートごとに、紙を数珠つなぎにします。2か所留めがよいです。字を書いた表面ではなく裏面にマスキングテープを貼っていくと、見栄えが良くなります。
●リレープレゼン
参加者がそれぞれ担当してサマライズしたものを、順番にプレゼンテーションしていきます。「一人何分が持ち時間」と決め、ストップウォッチで管理しましょう。長くても3分くらいを限度にしないと、10人参加していたらそれだけで30分かかります。時間を意識してもらうことで、伝えるのに必要なエッセンスが絞り込まれます!
●ギャラリーウォーク
プレゼンが一通り終わったら、サマライズされた内容を眺める時間を設けます。
プレゼンを聴いて、気になったところや疑問に思ったところなどを振り返ります。これにより記憶の定着の促進と、ダイアローグする際の1つの入り口を探すことができます。
眺めるときにカラーシールを貼ってもらうと、参加者がどこに関心があるのかが分かって、面白いです。
●ダイアローグ
一般的には、3~4人程度のグループに分かれてダイアローグを行います。
少人数の方が発言がしやすいですし、話し手の声に集中することもできます。ダイアローグは複数回異なるグループを組ませてみましょう。そうするとグループごとに多様な対話がなされていたことに気づくはずです。最初から全員でダイアローグをしてしまうと、1つの方向に流れていってしまいがちですが、複数のグループに分けることで、多様性が生まれます。
④エンディング
●チェックアウト
チェックアウトとは、場に区切りをつけるプロセスと言い換えてもよいでしょう。場を終え、日常に戻る準備を整えます。自分の考えをアウトプットしたり、人の気づきを共有してもらう時間です。
ABDの終了は「はい、おしまい!」ではなく、一人一人が言葉を出して締めくくりましょう。ファシリテーターが、「今日、何を持ち帰りますか」という具体的に何を得たかの問いを立ててもいいですし、「今の気分は?」など好きなことを言葉にしてもらってください。
メリットとデメリットは?
●メリット
・参加者と共通の目的のもと、短時間で1冊の本を読める
・繰り返しアウトプットし、また考える時間を持つことで記憶の定着につながる
・対話を通じ、新たな発見がある
・参加者共通の言語や価値観が生まれる
いろいろありますが、なによりも「楽しい!」というのが一番かもしれません。
●デメリット
・参加者が多いと集中力が途切れる
・参加者が少ないと全部は読めない
・本を破ってしまう
上記に挙げたのは、デメリットというよりは注意近いです。参加者が多くなるとプレゼンに時間がかかり、聞いてるほうの集中力が途切れてしまいます。また、少し遠い位置からプレゼンを聴いてる人にとっては文字が読みにくかったりします。
逆に参加者が少ないと一人の負担が増えます。結果的に一部を割愛することになりますが、これが悪いとも言えないのがABDです。なんとなく読んだ気にはなれます。
それから、意外と多いなと思ったところでは「本を破るのが嫌だ」という人がいること(なぜ参加するんだという野暮な話は置いておいて)。一度経験してしまえばなんてことはないのですが、私も一番最初は禁忌を侵してしまっている感覚がありました。それが非日常の体験だったので私はハマったのですが、そうではない人もいることには留意しておいたほうがいいです。そういう意味でも、事前に裁断してくるほうが良いかと思います。
なんと日本発の読書法
今までにない読書法アクティブ・ブックダイアローグ®は、なんと日本の京都が発祥の地です。海外の手法っぽく思われますが、「アクティブ・ブック・ダイアローグ®」という言葉にコピーライトがついていることでお分かりのように、著作権管理もされています。
だからと言って、ライセンス料などを回収しているわけではないですし、マニュアルもダウンロード可能です。認定ファシリテーターも存在しますが、野良でも全く問題ありません。
こんなことにも使える!本を読むだけではもったいない
ABDは、チームビルディングや研修にも役に立ちます。
お気づきかと思いますが、全員参加型でもあり、優れたワークショップ&ファシリテーションテクニックでもある「チェックイン」「チェックアウト」「ワールドカフェをベースにした対話」などにより、あまり知らない人同士でも闊達に言葉のやりとりが発生するはずです。
ABDというのはそれ自体が目的ではなく、別の目的を達成したいときの手段に過ぎないのだということを認識しておきましょう。
ABDの効果をさらに高めるためのアドバイス
一通りの流れは説明させて頂きました。数時間だけでいろいろな効果を生み出せそうな気になりませんか?
もし、もう少しだけ効果を高めようと思うのであれば、いくつかアドバイスを提案させて頂きます。細かくはいずれ別のエントリーをしたいと思います。
・主催者は、参加者を事前に見極めましょう。ファシリテートが大きく変わってきます
・参加者は、主催者に協力的でいましょう
・ABD終了後には、PDF化するなどでみんなで出したアウトプットを共有しましょう
・ダイアローグの時間をしっかり持ちましょう
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